患者さんの理解度をぐっと深める方法【teach back】
コミュニケーションには送り手と受け手のとらえ方や、立場、知識、文化の違い等によって伝えるメッセージにゆがみが生じることがあります。『医師と患者のコミュニケーションに関する調査』*)において、患者がどのくらい医師の説明を理解しているかという調査がありました。
それによると、「自分の健康は自分で管理したい」(63.2%)「治療に積極的にかかわりたい」(61.6%)「病気や薬の情報を積極的に集めたい」(51.2%)と5~6割の人は健康や治療へのかかわりには前向きなのに対して、
病気や治療に関する“知識”について聞くと、「病気の知識を十分持っている」と感じている人は20.3%と低く、「治療方法」「薬の効果」の知識についても十分知識を持っていると感じる人は2割を切ります。
また、医師と患者の双方に、病気や治療方法の情報提供に関して調査を行うと、医師が4~5割の割合で情報を提供していると回答したのに対して、情報提供されたと感じる患者は3割と、認識に開きがありました。病気や治療方法の情報は医師の認識ほど患者へは伝わっていないということになります。
患者へ説明後、わかりましたか?と尋ねるとほとんどの方がわかりましたと答えます。
実際にはわかっていなくてもそれを言えずにいる人もいて、日本人ではその傾向が強いようです。また、自分では理解しているつもりでも、実際は間違った認識をしている人も少なくありません。
そこで、患者さんの理解度をぐっと深める方法を紹介したいと思います。
【teach back法】
医療者から患者さんへの説明後、もう一度患者さん自身に説明してもらうことで、患者さんがどの程度理解しているか確認する方法です。
かといって、「今話したことを私に説明してください」とは言いづらいですよね。
「今の説明内容をご家族に伝えるとしたら、どんなふうにお話しされますか?」などと言い方を工夫して患者さんに説明してもらいます。病状説明などのインフォームドコンセントの時に使われることがあるようです。患者さんがアウトプットしているような感じですね。
服薬指導では吸入薬やインスリン自己注射の指導など、患者さんへの理解度が必要な場合に使えます。実際に手技をやってもらうことはShow-me法というそうです。
他にも患者さんへの説明の理解度を深める方法があります。
・ゆっくり時間をかけて説明する
・わかりやすい言葉で説明する、専門用語を使わない→一包化、相互作用、薬袋、拮抗、など難しい言葉使っていませんか?薬剤師には当たり前の言葉でも患者さんは理解していません。
・図や絵で説明する
→文字や言葉より、視覚的なイメージはわかりやすいだけでなく、記憶にも残りやすい!“百聞は一見にしかず”です。
・1回の情報量を制限して繰り返す
・質問しても恥ずかしくない環境を作る
患者さんへ安全・安心して正しく薬を使っていただくために、そして薬に対する正しい知識を身につけていただくために、服薬指導は薬剤師の腕の見せ所ですね。
*参考:NTTコムリサーチ、京都大学大学院共同調査
『医師と患者のコミュニケーションに関する調査』
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