薬剤師国家試験(第103回 問286)に出題されるなど、かなり教科書的な内容なのでご存知の方も多いと思いますが、実際に経験した具体例などを含めてshareさせていただきます。

※第7回外来がん治療認定薬剤師筆記試験にも(私の記憶ですが…)出題されていました!
 

アントラサイクリン系抗がん剤による心毒性は急性と慢性に分けられる。

急性心毒性
主に心電図異常であり、投与量には相関せず、投与後数時間以内に発生するが、一過性であることが多い。

慢性心毒性
心筋症やうっ血性心不全などがあり、投与数週間~数カ月以上、場合によっては10~20年経過して発生することもある。不可逆的な心筋障害であるため、注意が必要で、累積投与量に依存しているため、累積投与量を確認することが重要である。

一般名       商品名       累積投与量の上限値 
ドキソルビシン   アドリアシン    500mg/㎡
          ドキシル
ダウノルビシン   ダウノマイシン   25mg/kg
エピルビシン    ファルモルビシン  900mg/㎡
ピラルビシン    ピノルビン     950mg/㎡
          テラルビシン
イダルビシン    イダマイシン    120mg/㎡
アクラルビシン   アクラノシン    600mg
ミトキサントロン  ノバントロン    160mg/㎡


<実際に経験した例>
・奏功しているレジメンが継続されている中で、累積投与量の上限値を迎えそうなことを主治医へ注意喚起した。
過去にアントラサイクリン系抗がん剤による治療歴があることを主治医へ注意喚起した。

ほとんどの医師が累積投与量について理解し、把握した上で治療を行っていますが、稀に他院での治療歴や他のがん種(特に造血器腫瘍)での治療歴を失念していることもあるため、注意が必要です。

医師は患者の命を救うため、治療方針を決定しますが、その状況によっては危険が潜んでいる場合もあります。
薬剤師として医師と独立した立場で、勇気を出して注意喚起を行うことが患者さんの安全を守るために重要だと思っています。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

参考資料:がん専門・認定薬剤師のためのがん必須ポイント第4版(じほう)

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プロフィール

hossi
性別
男性
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自己紹介
病院薬剤師として主に外来がん治療に携わっています。高齢化の進む中、医療はまさに日進月歩。薬剤師の仕事も対物から対人へとシフトしていることを実感しています。皆さんと知識や経験を共有し、多くの学びが得られたら嬉しいです。
保有資格
外来がん治療認定薬剤師、日病薬病院薬学認定薬剤師

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