初めまして。

病院で緩和ケアチームに所属しています。
薬以外の話ですが、こんなこともあったよというのを書きたいと思います。
少し長くなりますが、他の方のACPや在宅医療のメモと合わせて読んでもらえたら嬉しいです。


がん患者で元々疼痛コントロールについて関わっていた患者さんで
治療で入院中、院内救急で救命病棟へ転棟し
抜管後も誤嚥が続いている方がいました。

そこでご家族を呼んで主治医が話したことは
「病院にいて気切をすればまだ半年〜一年は生きられるかもしれない、自宅退院は無理だろう」
という話。

実は救命病棟に入った時から
ご家族は家に連れて帰りたいと思っていたそうですが
主治医の説明で、一度退院を諦め、転院調整することに納得しました。


しかしその後、私がご家族と話した時ご家族から漏れた言葉は
「・・・やっぱり、連れて帰りたい」
という言葉。

ただ患者本人は複数の点滴で薬剤を投与し全身状態を保っている状態で
一般的には在宅で看れる状況ではありません。

でもご家族は
「もう十分頑張った、(気切などをして)もうこれ以上頑張らなくていい」
「あの人家がすごく好きだったんです」
「たとえ帰る車の中で何か起こったっていい、一緒に家に帰りたい」

そして話すだけでいっぱいいっぱいの本人からも
「帰れるなら帰りたい」という言葉がでてきました。



このままでは、本人も家族もきっと後悔する。
そう思い、本人と家族の希望を再度医師看護師へ伝えた結果
他職種カンファレンスをひらくことになりました。
驚いたことに、このカンファレンスまでの1時間足らずで
地域連携室の看護師が在宅で看てくれる先生を見つけてくれていました。

おそらく自宅へ退院したら何日も持たない状態であることには変わりなく
倫理的な問題含め様々な視点から考えました。
結果、どんな形であれご希望を叶えるために、自宅へ帰す方針になりました。

そこからの各スタッフの全力の退院調整が始まりました。
在宅医へ連絡をし、持って帰らないルートの抜去、ドクターカーの手配を行い
退院処方と在宅へ繋ぐ麻薬のPCAポンプの準備をして
看護師、医師同伴のもとドクターカーで出発しました。
途中危ない状況はあったようですが無事に帰宅し在宅医へつなぎ
2日後に息を引き取ったと聞きました。
後日、ご家族からは感謝のお言葉をいただきました。


よく勉強会でも「医療従事者が患者の希望に対する壁になってはいけない」という話を聞きますし
自分も、後輩にそう話します。
今回はあやうく壁になりそうでした。
でも、チームの力で壁にならずにすんだ、と思っています。


私が勤めているのは急性期病院です。
全身に持続点滴をしている患者だと「この状態では帰れない」と考えてしまうことがよくあります。

ただ
「患者に帰りたい」という希望があれば
帰れない理由を頑張って説明するのではなく
帰すために薬剤をどうするのか、を考えるのが薬剤師の役割だと改めて思いました。


今回も患者の状態を考えると
正直、これで良かったのか、良くなかったのか、わかりません。

ただ、最後まで患者と家族の気持ちに沿ってできる限りのことをするという気持ちは
いつまでも持ち続けて行動したいと思った出来事でした。
そしてその時に全力を出せるよう
薬剤師として知識と経験を積んでおかないといけないなと改めて思いました。

 

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プロフィール

ぽん
性別
女性
最終ログイン
自己紹介
病院薬剤師
消化器内科、産婦人科、麻薬管理、などを経験し、現在は緩和ケアチーム、学生実習、DIを担当しています。
知識が多い分野がマイナーな分野なので、みなさんと色んな知識を共有できたらと思います。
保有資格
日病薬病院薬学認定薬剤師

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