熊外傷に対する薬物治療
なかなか遭遇する症例ではないと思いますが、せっかくなのでメモしたいと思います。
秋になり、私のいる地域ではクマの出没が相次いでいます。
当院は高度急性期病院なのでクマに襲われた人が何人か運ばれてきました。
救急外来Drから電話が来ました。『クマ外傷の人が運ばれてきて、破傷風トキソイドと破傷風人免疫グロブニンが必要なので用意しておいてください!』
クマガイショウ??熊に襲われた??破傷風トキソイド?
熊外傷という言葉を初めて聞きました。
後日調べてみました。
クマ外傷について
・クマ外傷は頭部顔面領域に多く、脳神経外科、眼科、耳鼻科、歯科口腔外科、整形外科等の専門科が共同して治療を行うことが多い。
・適切な創傷処置と感染予防が大切。
感染対策として、抗菌薬投与および破傷風予防などが行われる
・傷の性状、創の深さ、壊死組織の有無や感染兆候などにより破傷風のリスクを判断する。
破傷風とは
・破傷風菌が産生する毒素のうち神経毒素による急性中毒・土壌・糞便などに広く存在する嫌気性菌で、外傷により体内に侵入
・3~21日間の潜伏期で発症、強直性けいれんや呼吸筋麻痺により死に至る(致死率20~50%)
・1968年からDPTワクチンの予防接種が開始され激減したが、近年でも30~50人/年発症。多くが60歳以上。五類感染症全数把握疾患。
DPT:ジフテリア・百日せき・破傷風混合ワクチン(3種混合ワクチン)
熊外傷のような動物に噛まれた場合に限らず、さびたくぎが刺さった人や、転んで皮膚を擦りむいた人など、どんな傷からでも破傷風のリスクはあります!
受傷後の破傷風予防
破傷風の予防接種終了後10年を超過している場合や、接種歴不明の場合、トキソイドの筋注、さらにリスクに応じて免疫グロブリンの投与が必要。
破傷風菌が出す毒素を無毒化したワクチンで、破傷風の免疫を作り発症予防
『沈降破傷風トキソイド』0.5mLを筋注
・抗破傷風人免疫グロブリン
破傷風毒素に対するヒト由来の抗体を高濃度に含有しており、破傷風毒素と結合・中和し、破傷風の発症予防及び発症後の症状を軽減する血漿分画製剤
商品名:テタノブリン、テタノセーラ、テタガム、破傷風グロブリン
250単位を筋注または静注
在庫はありますが、なかなか手に取ることがない薬剤なので勉強になりました。
熊外傷の文献を調べるときは眼球破裂や顔面が崩壊した結構グロテスクな写真が載っていることがあるのでくれぐれも注意してください。
参考文献:外傷における破傷風予防 大塚勇輝
クマによる顔面外傷13症例の検討 鈴木真輔
日本血液製剤機構HP
医療関係者のためのワクチンガイドライン 日本環境感染学会
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