brittle型糖尿病に介入した経験
今回は回復期・療養病院での症例報告をしたいと思います。堅苦しいものではないので、気楽に読んでいただけたら幸いです。
80歳男性、病名は急性硬膜下血腫、既往は糖尿病。
brittle型糖尿病で、外来ではノボラピッド1日3回打ちをしていたが、血糖コントロールに難渋していた。
平成31年と令和1年に重症低血糖で入院治療。インスリン過量による低血糖予防のためHbA1c 7.8〜9.5でコントロールしていた。
若ければカーボカウント適応だが、高齢の為不可。
今回入院時血糖値400。現在150〜250でコントロール中。
入院になったためランタスを導入してみたが、夕から寝る前に低血糖が起こり導入断念。
1単位で大きく血糖値が変動するため、血糖値は150〜250で維持できればOK。
以上のような内容が長文で情報提供書にかかれていました。
当院転院時、糖尿病薬の内服は無し。ノボラピッドを持参し、朝-昼-夕に10-8-8で使用中でした。
ノボラピッド持参分終了後はヒューマリンRでスケール管理し、ある日の血糖値は244(R2)-249(R2)-217(R2)。だいたい200前半でコントロールされていました。
回復期病棟の医師は、私がかつて糖尿病療養指導士の資格を持っていたことを知ってか知らずか、糖尿病治療に行き詰まった時に電話をかけてきます。
私はbrittle型糖尿病の患者さんは初めてで、そもそもbrittleって何というレベルでした。長文の情報提供書によると、インスリンは必要だけれども少しのインスリンで大きく血糖値が変動し、血糖コントロールが難しい患者さんだということのようです。
施設に退院予定だったので、手間のかかるインスリンの頻回投与は受け入れしてもらえません。インスリンの1日1回打ちでのコントロールを目指します。ランタスの導入が簡単なのですが、ランタスでは低血糖が起こることがわかっています。インスリンは必要だけれども、効きすぎてはダメだということです。
当院に入院してからの血糖値のパターンをみてみると、夕の血糖値は朝昼に比べて低めだが、朝はそれほど血糖値が下がっていない傾向がみられました。
以上より、通常1日2回打ちするヒューマリン3/7を使用し、1日インスリン必要量の6単位より少なめの朝4単位から開始し、昼夜はスケール対応とすることを医師に提案しました。夕方は自然に血糖値が下がるので、ヒューマリン3/7を朝1回のみ投与すれば、朝から昼間はインスリンの効果がでて、夕にはインスリンの効果がほぼ無くなり低血糖を予防できるのではないかと考えたのです。
ヒューマリン3/7を使い始めてから昼のインスリンをスケールで補正すると夕に血糖値が下がりすぎる傾向でした。
次に、全体的に血糖値を緩やかに下げるために、brittle型糖尿病で経験的に使用されているα-GIを使用してみて、様子をみながらインスリンを6単位に増量することを医師に提案しました。
血糖値はだいぶ安定してきていましたが、リハビリが進み食事形態が全粥から軟飯に変更になって、摂取する糖質の量が増えたため、血糖値が少し上昇しました。
食事形態変更で血糖値上昇傾向であることを医師に伝え、ヒューマリン3/7を8単位に増量することを提案しました。
以降、血糖コントロールが安定して糖毒性が解除され、血糖値は100後半〜200前半でコントロールできるようになりました。1ヶ月半ぐらいかかりましたが、インスリンを1回打ちにできたことで無事施設に退院することができました。
糖尿病専門医がいなくても、長期に入院する回復期・療養病院だからできる「時間」を味方につけて糖尿病食で食事を管理し、1日3回の血糖測定で血糖値を把握して管理し、患者さんの希望に添えるように治療に貢献できるところは回復期・療養病院の魅力のひとつではないかと思います。
回復期・療養病院で働くようになってわかったことがあります。
患者さんにとって最新・最良の治療と最適な治療が必ずしも一致するわけではないということです。
このような体験がいくつかありますので、需要があれば少しずつ紹介していきたいと思っています。
80歳男性、病名は急性硬膜下血腫、既往は糖尿病。
brittle型糖尿病で、外来ではノボラピッド1日3回打ちをしていたが、血糖コントロールに難渋していた。
平成31年と令和1年に重症低血糖で入院治療。インスリン過量による低血糖予防のためHbA1c 7.8〜9.5でコントロールしていた。
若ければカーボカウント適応だが、高齢の為不可。
今回入院時血糖値400。現在150〜250でコントロール中。
入院になったためランタスを導入してみたが、夕から寝る前に低血糖が起こり導入断念。
1単位で大きく血糖値が変動するため、血糖値は150〜250で維持できればOK。
以上のような内容が長文で情報提供書にかかれていました。
当院転院時、糖尿病薬の内服は無し。ノボラピッドを持参し、朝-昼-夕に10-8-8で使用中でした。
ノボラピッド持参分終了後はヒューマリンRでスケール管理し、ある日の血糖値は244(R2)-249(R2)-217(R2)。だいたい200前半でコントロールされていました。
回復期病棟の医師は、私がかつて糖尿病療養指導士の資格を持っていたことを知ってか知らずか、糖尿病治療に行き詰まった時に電話をかけてきます。
私はbrittle型糖尿病の患者さんは初めてで、そもそもbrittleって何というレベルでした。長文の情報提供書によると、インスリンは必要だけれども少しのインスリンで大きく血糖値が変動し、血糖コントロールが難しい患者さんだということのようです。
施設に退院予定だったので、手間のかかるインスリンの頻回投与は受け入れしてもらえません。インスリンの1日1回打ちでのコントロールを目指します。ランタスの導入が簡単なのですが、ランタスでは低血糖が起こることがわかっています。インスリンは必要だけれども、効きすぎてはダメだということです。
当院に入院してからの血糖値のパターンをみてみると、夕の血糖値は朝昼に比べて低めだが、朝はそれほど血糖値が下がっていない傾向がみられました。
以上より、通常1日2回打ちするヒューマリン3/7を使用し、1日インスリン必要量の6単位より少なめの朝4単位から開始し、昼夜はスケール対応とすることを医師に提案しました。夕方は自然に血糖値が下がるので、ヒューマリン3/7を朝1回のみ投与すれば、朝から昼間はインスリンの効果がでて、夕にはインスリンの効果がほぼ無くなり低血糖を予防できるのではないかと考えたのです。
ヒューマリン3/7を使い始めてから昼のインスリンをスケールで補正すると夕に血糖値が下がりすぎる傾向でした。
次に、全体的に血糖値を緩やかに下げるために、brittle型糖尿病で経験的に使用されているα-GIを使用してみて、様子をみながらインスリンを6単位に増量することを医師に提案しました。
血糖値はだいぶ安定してきていましたが、リハビリが進み食事形態が全粥から軟飯に変更になって、摂取する糖質の量が増えたため、血糖値が少し上昇しました。
食事形態変更で血糖値上昇傾向であることを医師に伝え、ヒューマリン3/7を8単位に増量することを提案しました。
以降、血糖コントロールが安定して糖毒性が解除され、血糖値は100後半〜200前半でコントロールできるようになりました。1ヶ月半ぐらいかかりましたが、インスリンを1回打ちにできたことで無事施設に退院することができました。
糖尿病専門医がいなくても、長期に入院する回復期・療養病院だからできる「時間」を味方につけて糖尿病食で食事を管理し、1日3回の血糖測定で血糖値を把握して管理し、患者さんの希望に添えるように治療に貢献できるところは回復期・療養病院の魅力のひとつではないかと思います。
回復期・療養病院で働くようになってわかったことがあります。
患者さんにとって最新・最良の治療と最適な治療が必ずしも一致するわけではないということです。
このような体験がいくつかありますので、需要があれば少しずつ紹介していきたいと思っています。
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